家族・私有財産・国家の起源―ルイス・H.モーガンの研究に関連して (1965年) (岩波文庫)

私はマルクス＝レーニン主義という言い方はあまり適切ではないと思います。それではエンゲルスがかわいそうです。マルクス＝エンゲルス主義の方が的確ではないでしょうか。この本は人類学者モーガンの書物を底本にして、エンゲルスがそれを止揚発展させたものです。人類の野蛮な時代に行われたとされる、近親相姦が許された家族形態からプナルア家族へ、そして一夫一婦制度への移行から大家族共同体へ、氏族制度から氏族の分断へ、農業や手工業における奴隷と貴族の誕生へ、そして私有財産を保持できる時代が訪れ、富を蓄積した資本階級とそれを持たない労働階級の形成へ、そして家族は核家族化し、その支配者としての国家が誕生し、それに伴うプロレタリアとブルジョアの産出へ・・・。うろ覚えなので適当に書いてきましたが、これらの単語がレヴィ＝ストロースの『構造人類学』にもそっくり登場してくるのがわかります。明らかに彼はエンゲルスを強く意識して『構造人類学』を書いています。この『家族・私有財産・国家の起源』は長いあいだ左派のバイブルと言われてきました。そう言われても不思議ではないほどのカリスマ性をこの書は持っています。弁証法的唯物論（唯物史観）から見た人類歴史の発展様式の透徹した記述です。