ドイツ語で楽しむ日本昔ばなし Japanische Volksmarchen【日独対訳・MP3 CD付】

アマゾンの商品内容にあるとおり、誰でも知っている、桃太郎など日本の童話5編についてそれぞれ、ドイツ語訳とその対訳(建前としてはこちらが本文で、ドイツ語がその翻訳ということになる)、｢覚えておきたいドイツ語表現｣、巻末には｢ワードリスト｣と、一見、完璧な構成となっている。｢はじめに｣に続く｢本書の使い方｣も、類書にないほど丁寧な記述で、音声教材もスピードは同じだが、2種類あって、この学習法なら、本当に｢ドイツ語回路｣ができるかもと、好感が持てる。また、｢コラム｣もおもしろい。実際、ドイツ語は、やさしい単語で書かれており、中級者以上であれば、知らない単語は、いくつもないと思う。ただし、やさしいのは、あくまで単語レベルの話であって、熟語や慣用表現等は、実際に、ドイツ語の原書を読むと頻出するものが、どんどん出てきて、中級者ならば辞書や文法書を利用すれば何とかなると思うが、初級者にはとても歯が立たないだろう。そのためにこそ｢ワードリスト｣があるはずなのだが、これが、本文中の語句のうち、なぜかやさしいものしか記載されていなく、結局は、辞書を引き直さなければならない。ちなみに、自分の知らなかった単語や熟語は、ほとんどすべて、｢ワードリスト｣には載っていなかった。また、｢覚えておきたドイツ語表現｣は、それぞれ丁寧に記述されてはいるが、事実上、初級程度であって、これまた、ありがたみは、感じられない。本文下にある｢音読のつぼ｣も、正直初級レベルで、たいしたことは書いていない。以上を勘案すると、本書は、、初級レベルの学習者を対象としているように思えるのだが、その割には、ドイツ語本文は、やさしい単語でもこんなに立派なドイツ語を書くことができるのだと思えるほど上手なので、中級者に最適だろう。一つ一つの表現やよくわからない文法事項を、丁寧に調べ、、自分のものにしてゆくなら、将来、原書にあたる際の基礎となりえると思う。初級者の方は、細部にこだわらず、なんとなく、日本語と照らし合わせる程度にして、音声教材を聞き込み、音読を重ねるのがよいだろう。また、童話に関心のある上級者には、すべて読んでも1時間とかからないので、単語、表現の落穂拾いと息抜きにさらっと読んでも、楽しいと思う。ということで、「独日対訳部分」、「覚えておきたいドイツ語表現」、「ワードリスト」の各パートの連携が悪いため、せっかくの本書の意図が生きてこないのが残念だ。また、ドイツ語文についても、、自分には、正しいドイツ語か、また、文法的に妥当か疑問に思うところが数か所あるが、自分には判断できないので、このレビューでは、これについては、記述を控える。評価は、厳しいようだが、☆1つを減じ、4つとしたい。