ナスカ砂の王国―地上絵の謎を追ったマリア・ライヘの生涯 (文春文庫)

その一生をナスカの地上絵の研究に捧げた孤高の研究者、マリア・ライへ。名前は知ってはいたが、生い立ち、家族、経歴が詳細に記述され、彼女の背景を初めて興味深く知ることが出来た。経済的困窮にもめげず、何故研究に没頭できたのか？ 誰もが疑問に思う所だ。地上絵の謎に魅せられ、自ら解明する事が己れの運命だと感じたと言うが・・。彼女が初めて地上絵を見た時の衝撃に突き動かされたことは想像に難くないが、それだけで地道に何十年と研究が続けられるものなのか？ マリア自身の言葉でもっと彼女の人生の多くを語らせてほしかった。故国を離れてナスカに住み、報酬の得られない研究を続けたマリアは凡人と何が違っているのか、最後まで疑問のままである。著者が取材の為に訪れたペルー。アンデスの山々、熱い砂漠の中を走り続けて辿るナスカの街。パンパに描かれた壮大な図形の数々。南米の大自然の風景に佇む著者の姿が確かな文章力で描かれている。著者の方がマリア以上に印象に残る。