方丈記 (ワイド版 岩波文庫)

短いのですぐ読める。ただし現代語訳なし。と書くとそれだけで読者が講談社とか角川に流れてしまう気がするんだが。仕方がない、本当のことなので。一応脚注は充実してるので現代語訳なしでも大丈夫だとは思う。注目すべきは長明自筆の（たぶん）写本が掲載されていること。カタカナの和漢混交文。当時、カタカナは坊主が使ってたと何かで読んだ記憶があるが、この時代のものは珍しいので興味深く読んだ。ちなみに徒然草はひらがな。違いは何なんだろう。またいていの人にはどうでもいいことかもしれないけれど。長明はホントツイてない人生だった。性格に問題があったと言う人もいるけれど、それでも実朝に和歌を教えに鎌倉まで行ったり、後鳥羽院にも多少は目をかけてもらってる。でも後に実朝は暗殺されちゃうし後鳥羽院は島流し。時代が悪かったね。この時代ってのはあんまり認知されてないけど権力闘争がすごくて血で血を洗う時代だった。三浦一族なんか悲惨の一言。災害などについては方丈記本文に記されている通りだし。長明は生涯ロクな仕事についてないでしょ。できなかった。日本史上最大のロスト・ジェネレーションかもね。出家したなんて言うとかっこいいけど、ホントのところは破れかぶれ、もーどーにでもなれ、なんて思ってたんじゃないか。長明が出家したのと同じ年頃になって改めて方丈記を読んでみると、ふとそんなことを痛切に感じるのです。